さあ、第二の人生の始まりだ

現役で若い頃、我が社のOBが一番多い死亡年齢を確認したら、なんと「六十七歳」。そのイメージがあり、定年以降は、「余生」を楽しもうと思っていた。しかし、日本の医療は進み健康寿命世界一の現状では、定年の頃は肉体的にも精神的にもまだ若い。「脳梗塞」をやり「狭心症」の持病を持つわが身だが、まだまだやる気十分だ。

定年という「駅」から何処へ行くか。ここからの線路は私自身想うがまま。「社労士」の資格は取得した現在、自分自身の線路ならば、しっかりとした誰にも影響を受けない線路で大きく羽ばたきたい。さあ、第二の人生の始まりだ。

部屋食の先輩が仕事を

自宅に大きな「ランの鉢植え」が送られてきた。「部屋食の先輩」からだ。そんなとき、その先輩から電話があった。

「合格おめでとう。良かったな。一緒に飯でもどうだ」

一緒に食事をすることになった。そこは、新宿だった。自身で殻つきの牡蠣等を焼いて食べるところである。大きなテントで大変賑やかな店は人でいっぱいだ。中に入って席を探していると、前掛けをした女性の担当者が、

「席が、空くまでここで、ちょっと待っていて下さい」

待っている場所には、大きな殻つき牡蠣、いっぱいの野菜、弁当など、食べたいものを取る為のトレーがおかれている。先輩は、大きな殻つき牡蠣をトレーに入れながら言った。

「今日は合格祝いだから、俺のおごりだよ。いっぱい食べようぜ」

先輩は元気がいい。奥から、威勢のいい声で若い店員が我々を見て手を振っている。

「席が空きました。こちらへどうぞ」

お互いにトレーいっぱいに殻つき牡蠣や野菜を乗せ席に着いた。殻つき牡蠣を焼いて食べるのは初めてで、新鮮味があり楽しくなった。受験勉強から、解放され、今まで肩に力が入り緊張していたのは何だったのだろうか、膨らんだ風船から「スー」と空気が抜けていく感じだ。

「おーい。ビールとウーロン茶」

先輩が、担当者に大声で怒鳴り、手慣れた感じで牡蠣を網に乗せ火加減を調整している。

「牡蠣はうまいぞ。合格祝いだから俺が焼いてやる。俺が接待役だな」

ビールとウーロン茶で乾杯した。

「乾杯。おめでとう」

先輩は、ジョッキの半分ほど一気に飲み干した。

「先輩、元気ですね」

「元気、元気。元気いっぱい。今日は牡蠣をいっぱい食べて今後の英気を養おう」

「ありがとうございます」

ウーロン茶を一飲みし、

「殻つき牡蠣を焼いて食べるのは初めてです。ほんとに嬉しい合格祝いです」

私は、牡蠣を食べられることに、お礼を言った。

「そう言われると嬉しいね」