疲れた、生ビールおくれ

※ 投稿者  平均以上の所得があり、安定した家庭を築いている 三一歳

世の中の出来事に無関心だった僕が 環境問題だとか世界平和だとか

この国の政治の有り様なんてことを 真剣に考えるようになったのは

第一子ができたことが 直接のきっかけだと思う

大気や水は汚染され モラルは低下の一途を辿り 

税金は際限なく高くなって 求人は少ないし 正社員にもなれない

やっとのことで就職したものの 長時間過密労働の連続で 

若者の自死率は 依然として高い水準で推移している

おまけに 大国の覇権争いやテロが絶えず 

日本がアメリカと一緒に戦争を始めそうな気配だ

暗い未来しか映らない 冷酷で非情な現実

そんな国をつくってきたのは 僕らの世代だ 

この子が大きくなった時に

「お父さんやお母さんは この世界がどんどん悪くなるのがわかっていて

どうして私を生んでしまったの」

と責められはしないか心配になった

僕は一年前に 脳の血栓が詰まる病気をして あやうく死にかけた

独身の頃の僕だったら 「このまま死んじゃっても別にいいかな」って思っただろう

でも その時は まだ小さい子どもや奥さんの顔が脳裏を横切って

もし逆の立場だったら つまり 奥さんや子どもが若くして命を落としたら

僕はどう感じるかってことが咄嗟(とっさ)に思い浮かんだ

そうしたら 「冗談じゃない 絶対 死にたくない」って思えてきた

僕は仕事がバリバリできるわけでもないし 

何かに秀でた才能を持っているわけでもない 

僕がいなくなったとしても

僕が勤めている会社や まして この世界にとって 大した影響はない

そんなちっぽけで 凡庸な自分でも

この子にとっては かけがえのない唯一の父親であり

奥さんにとっては 人生で一番身近な伴走者なのだ

そう考えると とても申し訳ない気がする

でも とてもありがたいことだとしみじみと思う

僕は家族ができて 初めて他人を 社会を そして自分自身を

大切に思えるようになった気がする

だから 逆に言えば

僕は 恋人のいない独身の人を見ては 

哀れな奴だと同情(いや、軽蔑といった方が近いかも)してしまう

「あいつらよりはマシな人生を送っているのだ」と再確認して 胸をなで下ろすんだ

つらいことがあったら そいつらと比較して 自分を慰めることにしているんだ