はじめに

キャリアと共働き

日本経済新聞朝刊の連載コラム『私の履歴書』に結びの言葉としてよく使われるフレーズがあります。

「仕事に追われる私を支えてくれた妻には今も頭が上がらない」

きっと妻は専業主婦、コラムの著者である有名企業の社長や会長は子育てを妻に任せっきりにして仕事一筋だったのでしょう。

こういう方が仕事から離れると、家庭での居場所がなくなるのではないでしょうか。

「お父さん、仕事優先で運動会一度も見に来てくれなかったよねぇ」

とか、

「入院してた時、仕事を理由にお見舞い来てくれなかった……」

とか、家族からの恨み辛みが聞こえてきそうです。私の周りにも、単身赴任で子供の小学校生活丸六年間、完全育児ノータッチって方がいます。

本当にいいのでしょうか。このような働き方、そして育児のあり方は、仮に社会的に成功しても幸せなのでしょうか。

昔はこれが当たり前、という方もいると思います。

しかし、その結果、熟年離婚をする家庭が増えるのであれば、やはり機能していない生き方なのではないでしょうか。

今は共働きが主流ですし、女性の管理職を増やしていくことが求められています。妻には望むキャリアがあり、夫が自分のキャリアだけを考えるわけにはいきません。

まして子供を授かると、キャリア、共働き、育児の三つを回していくことになります。子供を望まない家庭でも、共働きであれば夫婦のキャリアは異なることでしょう。

自分が望むキャリアが妻の望むキャリアと調和しない場合、我を通すのか、妻に譲歩するのか、選ぶことになります。

本書では、共働きをしながらキャリアを構築する実現性について、私個人の経験を参考にお伝えしたいと思います。

結論からいうと、私のキャリアは共働きをする前から全く思い通りになっていません。結婚して育児を始めてからは、妻のキャリアを優先し、元々うまくいっていない自分のキャリアを修復する道も捨てました。

妻より高い年収を得ていますので多少のプライドはありますが、妻のキャリアを優先することに迷いはありませんでした。仕事を楽しく充実して取り組んでいるのが妻ならば、仕事は仕事として割り切っているのが私だったからです。

私と違って仕事に対する姿勢が妻は前向きなので、応援する気持ちになれるのです。

断っておきますが、私が仕事に割り切った気持ちで取り組んでいるのは、入社してから一向に自分の要望が会社に伝わらず諦念しているからです。

入社当初は前途洋々、前向きな気持ちはありましたよ。