充実した大学生活を送り、臨床実習をなんとか乗り越えました。その後、国家試験もなんとか乗りきることができ、卒業することができました。しかし、臨床実習を終えた時に感じた不安と再び向き合うことになるのです。

それは大学の友人が私に言った一言がきっかけになりました。

その友人は「お前が治療している時に寝たら患者は死ぬかもしれないんだよな?」と一言私に言いました。正直に言うと、その友人の的確すぎた一言にかなりムカつきました。臨床実習を終えた時に感じた不安を無意識に避けていたからこそ、的確すぎた一言にムカついたのでしょう。

それからは、自問自答の日々でしたが、このことがナルコレプシーと自分、今後の人生、価値観について時間をかけて考えるきっかけになりました。

理学療法士として働くということは、患者を担当し、その方の今後の人生を担うことになります。リハビリの対象者は、病気で障害を抱えた方が多く、病気を患っている私が担当したら責任を果たせないのでは? 失礼ではないか? といった不安が次から次へと生まれてくるのです。

本当に小さなことから一つひとつ考えました。自分の性格、特徴、何が好きで何が嫌いか、できることとできないこと、好きな人と嫌いな人など……。

この時に強がってなのかカッコつけてなのか分かりませんが、どんなマイナスな要素もプラスに捉えて書き出していることに気がつきました。この時、私の特徴は超ポジティブ思考なのだと気がつきました。ポジティブ思考だと気づいてから、徐々に何事に対してもポジティブに考えられるようになっていきました。その結果、当時抱えていた「本当に理学療法士になっていいのか?」という不安も解決につながります。

言葉にすると教科書的で少し小恥ずかしいのですが、「ナルコレプシーを抱えた私だからできることもあるはずだ」といった考えができるようになりました。さらには、ナルコレプシーなんか関係なく「私にしかできないことが絶対にある」という考えに至ったのです。

このように考えることができたのは、先ほどまでに記したように、ナルコレプシーを抱えている私でも周りの方の支えのおかげで充実した生活を送ることができたからだと考えています。私は友人の一言から自分と向き合い始め、自問自答を繰り返し続けた結果、心のモヤモヤが晴れて、前を向くことができました。

ナルコレプシーをはじめ病気を抱えることで塞ぎ込んでしまう方は本当に多くいます。そんな方々に、「病気を理由に諦める必要はない」と伝えたい。そういった思いを実現させるためにも、理学療法士という職業は、医学的知識もあり、身体機能から日常生活動作までサポートすることができる仕事だと改めて気づくことができ、病気を抱えていても理学療法士として働く決意をすることができました。

ナルコレプシーが私の中で「病気」から「個性」へと認識が替わった瞬間でした。