日本編

ヨーロッパ旅行

ヨーロッパを旅行して感じたことは、どの町も建物や通りなどの古さの中にある美しさ、カトリック教会の大寺院がどの大都市でも見られた。

広がる田園風景は人工的にデザインされたような自然の美しさだった。日本画の世界ではなく油絵の風景だった。ホテルや住居の家具、壁、床などの材料、日本で見たこともないヨーロッパ製品のデザインは機能的で耐久性と美意識が感じられた。

このヨーロッパ旅行で政裕は製品デザインの感覚を少なからず学んだ気がした。思考の範囲を広げるというか、もっと大きな世界の存在を感じた。素晴らしい体験をさせてもらった。

ローマを午後出発、帰国の途についた。夕刻ベイルートに着いた。夕日が沈むベイルートの町はアラブ風の建物が美しく輝いていた。

次の給油地、イランのテヘランはすでに暗闇に包まれて、空港にはあちこちに火が燃やされて、それが灯りだった。異様な雰囲気だった。

そのあとかなり長時間の飛行でインドのデリーに到着、すでに夜明けを迎えていた。乗客の多くは座席で寝ていたが政裕はタラップから出て外の様子を見た。

空港敷地内のあちこちに牛が寝ていた。異常に蒸し暑かった。ようやく離陸、次の給油地はバンコックに向かった。遠く左にヒマラヤ山脈の峰々が連なって雲の上に見えていた。

バンコックでは空港ビルに下ろされ買い物などさせられたがただ眠いだけだった。香港はすでに夕刻、大きな山の背に町全体灯りがついて海に反射し輝いていた。

着陸は高層ビルの間を縫うように滑走路に突入していった。羽田に到着したときは深夜になっていたが、同行の連中には大勢の出迎えの家族たちが待っていて無事を喜びあっていた。

政裕は翌朝の新幹線で浜松に向かった。当時の海外旅行は大変な出来事ではあった。