デイサービスに行く? 行かない?

2020年のお正月明けに、NHKスペシャル「認知症の第一人者が認知症になった」という番組を見ました。

日本の認知症医療の第一人者で、長谷川式認知症スケールという認知症の知能検査の考案者として広く知られている、長谷川和夫先生が認知症になったというのは、私も新聞記事などで読んで知っていました。

番組を見て強く印象に残ったのは、長谷川先生がデイサービスに参加する場面です。憮然とした表情で、ただ座っているだけ。ほとんど無言です。デイサービスが終わって家に帰って来てから、「何がしたいかということを聞いてほしい」とおっしゃっていました。したくもないゲームなどに参加させられるのが、苦痛だったようです。

長谷川先生も、医者として認知症の患者を診ていた時は、デイサービスに参加することを患者や家族に積極的にすすめていました。そして、自分がデイサービスに行くのも、一日中介護を担っている奥さんの負担を軽減するため、というふうに理解されています。

それでも本音を言えば、自分がデイサービスに参加するのは嫌なようです。家にいたり、行きつけの喫茶店に娘さんに連れて行ってもらったりするほうがずっと良いようでした。

私たちのクリニックの高齢の患者さんでデイサービスが好きな方は、話好きの女性の方が多いようです。診察時にも、「デイサービスでお友達ができて楽しい」「ヒノキのお風呂に入れるのが良いです」などと教えてくれ、行くのを楽しみにしている様子です。

一方、デイサービスに行きたくないという方もたくさんいます。本人にどうして行きたくないのか尋ねると、「私には必要ない」「気が進まない」という答えだったり、何も答えず俯いていたりします。娘さんや息子さんの話では、「母は非社交的だから」「人付き合いが苦手なので」などという答えです。

娯楽として何がしたいか聞いてみても、「何もしたくない」「家にいたい」と言う人も多いです。デイサービスは、通所介護と呼ばれる介護サービスの種類の一つです。日帰りでデイサービスセンターや施設などへの送り迎えがあり、半日のサービスと一日のサービスがあります。

家で閉じこもりがちな高齢者を外に連れ出して、より健康的に過ごしてもらうという側面と、高齢者の家族に休息を与えるという側面があります。デイサービスの基本的な業務内容は、健康状態の確認および管理、食事摂取や水分補給、そして入浴や排泄の世話などの日常的な生活のケアです。

それ以外に、リハビリや体操をしたり、絵を描いたり歌を歌ったりなどの娯楽の時間もあります。デイサービスでは要支援度や要介護度、そして認知機能がさまざまな高齢者が集まって来るので、娯楽も、最大公約数的な、みんなができるだけ楽しめるようなものになります。具体的には、簡単なクイズや懐メロ、塗り絵や簡単なクラフトワークなどです。