「今まで出会ってきた女たちは、あなたの言動や行動を記録しなかったわけ? あなたの話をずっとデータとして保存している私の姿を見ていたでしょう? あのデータを送るときにはね、ほんの少しの時差が生じるのよ。

あなたがもし、ありのままの姿を消しに行ったのならすべてが少しずつずれて、データはそのまま残るってわけ。データが残ったってことは、ほら、この私の目の前のスクリーンを見て。あなたがしゃべった事が全部残ってるでしょう?

私は、自分の行動は、覚えていないけど、ここにこうして記されてることは読めるし、あなたが私に何を話していたかも一目瞭然ってわけ。それから、いくら、また二時間前に戻っても、このデータは消せないわよ。一度記録したものは元に戻らないから」

「君ってけっこう優秀なんだね。時差が生じることや、君のように記録に残しながら僕の話を聞いた人は初めてだったから、そこまで深く考えていなかったよ。文章を消すところまでは頭になかったな」

「誰だってこのぐらいのことはわかるはずよ」

種男百五番は、二時間前にワープして来た為体力を消耗していた。

「悪いんだけど、少し休ませて」

そう種男百五番は言って、リビングルームにあるカウチに横になった。

※本記事は、2021年3月刊行の書籍『種男貸し出し中』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。