俳句・短歌 四季 2021.08.05 歌集「漣の夢」より3首 歌集 漣の夢 【第65回】 上條 草雨 中国江蘇省・無錫に留学し、その地の美麗さに心奪われた著者が詠み続けた、珠玉の短歌二一〇〇首と三九首の漢語短歌を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 降る雨に快活に立つ草木くさき哉生きてく糧かてに濃くなる緑 雨模様緑の萌える誕生日生きて行こうと声が聞こえる 秘めやかに紋白蝶が深緑しんりょくの森に舞ってる白い優しさ
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『メグ動物病院』 【第5回】 後藤 あや 人見知りのアルバイトに、「動物が好きなら大丈夫」と言ってくれたメグ先生 「そのバイトのミネちゃん、ていう子が言うの。『私ね、人見知りで人と話すのも苦手だったの。バイト先でもよく怒られて、高校の時から一カ月も続いたことなかったの。ここの面接の時に正直に言ったの。そしたらメグ先生が、『ここで相手にするのは動物だよ。君は小さい時から犬猫飼ってたんだね。ベテランじゃないか。人と話さなくても、大丈夫。動物が好きならやってみないか』って。それに、『困ったことあったら、俺でも誰に…