振り返ると、平成の初期くらいまで、日本にも世界の人気を集めるような斬新なアイデアから生まれた製品を送り出す余裕があった。「カップヌードル」や「ウォークマン」などはその一例だ。

だが、バブル経済崩壊以降は日本社会全体が暗くなると同時に、我々の気持ちも萎縮、つまりしぼんでしまい、こうした「進取の精神」は消えていったと考えている。

いま、日本製アニメが海外で人気だと言われるが、実は昔から人気があった。

私が平成6年(1994)にヨーロッパを旅行したとき、行く先々で自分が慣れ親しんだ日本のアニメがテレビで流れていて、とても驚きそしてうれしく思ったのを記憶している。だからほかの分野が弱くなり残ったのがアニメ、というほうが正確ではないか。

話は飛躍するようだが、かつて「カップヌードル」や「ウォークマン」を生み出せた日本がなぜ「iPhone」を生み出せなかったのか。

一見つまらないようだが、じっくりと考えるだけの価値ある問題だと思っている。

なお、世界最古の企業は、大阪にある「株式会社金剛組」という寺社仏閣の建築を行う企業だそうで、聖徳太子の時代の西暦578年創業という長い歴史を持っている。

この会社のホームページを拝見すると、理念として「伝統を重んじつつ、新しい技術を常に追求」と書いてある。こうした長い歴史を誇る企業でさえ、伝統にアグラをかくのでなく、新しいことに取り組む「ベンチャー」精神を持っている。

いやむしろ、「ベンチャー」精神を失わず、常に時代の動きにも敏感だったからこそ、1500年という長い期間、生き残ってきたのだと考える。