若葉が着た白いブラウスと黒のスカートは、告別式のために購入した物で、着るのはそのとき以来だった。

「四十九日って何?」

「亡くなってから四十九日目にやる行事。それまではこの世にいて、四十九日を過ぎるとあの世に逝くってなってるみたい」

「じゃあ、パパは今までこの世にいたの?」

「そういうことになるね」

若葉はそれ以上は話さなかった。ホテルには、若葉の祖父母にあたる新と霞のそれぞれの両親と、新の弟夫婦が来た。祖父母たちは告別式のあとも何度か自宅に来ていたので、あらためて話すことはなかった。

「困ったことがあったら遠慮なく言ってね」

「ママとがんばってね」

だれもが若葉の身の上を案じた。

――本当に困ったときは、どこまでしてくれるのだろう――

と思いつつ、「ありがとう」とだけ返しておいた。自宅に戻り、二人とも着替えてからテーブルに座った。

「疲れた」

若葉に微笑みかけながら言うと、霞は思い出したかのように書斎に行き、すぐに戻ってきた。

「パパからのメッセージだって。興味があったら観てみて」

と言って、若葉にDVDの入ったケースと封筒を差し出した。突然のことではあったが、若葉はそのDVDに何が入っているのかだいたいのことが想像できた。

だからこそ、どのような反応をしていいのか分からなかった。無言で受け取り、興味のないふりをして、そのままテーブルの上に置いた。霞は再び書斎に行き、黒のノートパソコンを持って戻ってきた。

「観るときはこのパソコンを使っていいからね」

と言って、DVDのそばに置いた。

「ママはこれ観たの?」

「若葉のは観ないよ」

「ママのもあるの?」

「あるよ」

「もう観たの?」

「まだ。ママも一人で観たいから、若葉が観たらパソコンを戻しておいて」

霞は若葉に背を向けてキッチンに行ってしまった。若葉はそれらを置いたままにして、風呂から出たあとも興味がないふりを続けていたが、霞に見透かされていると思った。

霞も早く観たい気持ちを我慢しているのかもしれないと思い、――先に観てもらえばよかった――と後悔した。

「おやすみ」

と霞に言うと、若葉はDVDと封筒とパソコンを自分の部屋に持っていき、机の上に置いて、すぐに起動させた。起動するまでの数秒が長く感じた。その間、机の前の壁に貼ってある女性アイドルグループのポスターに目を向けていた。

DVDのケースを手に取って、そこに『四十九日のあとに』と書かれたラベルが貼ってあることに初めて気がついた。

再生する前に、音が部屋の外に漏れないように調節した。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『アフターメッセージ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。