第一章 愛する者へ 3

白いワイシャツを着た新の上半身が映っていた。

画面の向こうから新が見つめていた。新の目はすでに潤んでいた。

「若葉……ごめんね……パパ、死んじゃってごめんね……」

新は今にも泣き出しそうだった。

「パパとママね、なかなか赤ちゃんが来てくれなかったんだ。だからずっと悩んでて、ずっと辛かった。そしたら、若葉がママのお腹に来てくれたんだ。パパとママ、とっても嬉しかったんだよ」

新の目が細まり、口元が緩んだ。

「だから、若葉が生まれたとき『ずっと大切にする』って誓ったんだ。それなのに、こんなことになって、本当にごめん……」

新は目を閉じて、頭を下げた。頭を上げたときには、涙が頬に流れていた。

「若葉のことを一度だけ強く怒ったことあったよね。覚えてるよね。パパ、あのとき感情的になっちゃって……パパ、ずっと後悔してた……ごめんね」

新は再び頭を下げた。

「ここで謝るのはずるいよね」

新は笑ったが、目からは涙が流れ続けていた。

――あのときのことかな――

若葉の十歳の誕生日のときに、霞が作った料理が予めリクエストしていたものと違ったことから、泣いて霞を責め続けていたら、テーブルで新聞を読んでいた新が立ち上がり、「もう食べなくていい」と大声で怒鳴ったことがあった。新に怒られたことは何回もあったが、そのときの声が一番大きかった。

怒鳴られて自分の部屋に閉じこもってそのまま寝てしまったので、夕ご飯は食べず、バースデーケーキは翌日のおやつに独りで食べることになった。新と口をきかなかった期間も、そのときが一番長かった。