大学がある町

大学がある場所は福岡市の「箱崎」という町。しかし、あと10年以内に大学は完全にこの町を去る。大学の多くはすでに福岡市内の他の場所に移転している。いずれ私の通っている専攻もそこに移る。

それまでのこの町と大学との関係性を私たちは考えている。これまでも町の人たちとイベントをやってきた。この地域には筥崎宮(はこざきぐう)というお宮がある。創建は923年。

大分の宇佐神宮、京都の岩清水八幡宮とともに日本三大八幡宮に数えられる。応神天皇を主祭とし、神功皇后、玉依姫命を祀っている。1月3日の玉取祭(玉せせり)、秋の放生会大祭などは全国的にも知られている。また、この地が面している博多湾は、古くから海外との交流において重要な拠点でもあった。箱崎の地史をひもとくといろいろ面白い事実に出合う。

大学がこの地に来たのは百年前である。そんな箱崎で、「現代音楽祭」をやることになった。2月9日から26日まで、トーク、ピアノソロ、博多仁和加仕立て音楽劇、ワークショップなど箱崎の喫茶店や本屋や大学でいろんなイベントがある。内容はもりだくさん。私たちの先生である作曲家が音楽監督。私も企画の段階から参加させてもらっている。

学生たちは演習授業の一環として広報や運営に関わる。けっして大人数を収容できる会場ではない。せいぜい数十人。互いの顔が見え、息づかいが感じられるこぢんまりとしたスペースで、演者と観客、お店の方と来客者の間に交流が生まれ、それがパフォーマンスに反映される。

箱崎という地のコミュニティで、「現代音楽」をテーマに何かが起こる。そんなことを想像し、わくわくする。今回が1回目で、継続してやっていく。大学として、まだしばらくお世話になるこの地と深く関わり、箱崎の人たちと一緒に何かをやりたい。そんな私たちの思いを感じてほしい。