「君は今回の任務についてすでに承知済みだが、任務先のその国の惨状は悪化の一途で、国民を苦しめ、外へは兵器で威嚇し、麻薬や偽札等、悪の巣窟になっている。

私を含め、五人はそれぞれの国を代表してここに臨んでいると思ってもらいたい。無益な戦争で多くの命と財貨を失う前に、小規模で隠密な消滅行動にかけるほか手段がない。

それで君を選んだ。作戦に必要なものは全部用意する。君と数人のチーム以外完全秘密で、メンバー同士も仕事以外の認知があってはならない。成功の報酬は5億ドルを保証する。

不成功の時はいつものように君の単独行動で、他のメンバーは全く関与しない。だが、成功を我々五人だけでなく、世界中の人々が願っていると信じている。是非その期待に応えてもらいたい」

熱い視線の四人の代表者たちが握手を交わし退室したあと、口火を切った男が椅子を勧めながら、

「加えてもう一つ任務がある。その国の大物が我が国に亡命したのは君も承知と思うが、本当の亡命かは少々うさん臭いところがある。我が国にとっては大変重要なことであるので、ついでに探ってほしい。

あの国に入国後、その男の組織が君をサポートする手筈になっているが、これがその男の資料と住所だ。まず、ここから手をつけてくれ」

その直後、男は無人の部屋に入ると鏡に向かい、先程までの軍人タイプの顔から、整髪剤たっぷりの頭と血色のない伏し目がちな顔になって、アタッシュケースを小脇に、そそくさと街中に消えていった。