法務(法の番人)の育成

現在のインドでは、資本金1億INRを超える非公開会社は、カンパニーセクレタリーを置かなくてはなりません。

カンパニーセクレタリーは、インドの弁護士資格者がさらに難解な試験に合格して取得できる、名誉ある資格です。法の番人であるカンパニーセクレタリーの役割は、会社法の運用と全体的な遵法行為の監視です。ただし、会社法の実行部署は法務ではなく、取締役の担当領域なので、カンパニーセクレタリーは会社秘書役と翻訳されることからも、取締役の右腕的存在なのです。

企業人としてのカンパニーセクレタリーへの指導も、当然ながら仕組みづくりとその制御・管理です。その範囲は広く、取締役会・株主総会における定例議題、並びに会社法、合弁契約からの通常決議・特別決議の明確化、などにも及びます。また財務取締役の就任の際には、会社法と合弁契約の解釈に基づく運用を合弁相手を含めた取締役会で上申します。ここでも、決め事をひたすら愚直に守ることで、正常点と異常点の識別感度が上がっていくのです。

法務の領分は、次のとおりです。

①コーポレートガバナンス(株主総会を最高機関とする取締役会、および指名委員会の運営、会計監査人・内部監査人の監査対応など)

②労働関係法規、就業規則、安全環境衛生、セクハラ防止法、および人事担当法規順守への監視(対・組合、従業員)

③合弁契約、会社法、商取法関係(対・合弁相手)

④民法、商法(対・取引先)

⑤独禁法(対・競合相手)

⑥PL法(対・消費者)

⑦贈収賄防止法、輸出入関連法規、土地収用法、および会計基準・税法の経理への監視(対・政府当局)

会社法に従ったコーポレートガバナンス、すなわち取締役会・株主総会での意思決定、それらをそのコーポレートガバナンスを統括したうえでの対外的な遵法行為、そうした仕組みづくりと経過観察が法務の仕事です。法務への指導と教育も、仕組みづくりと経過観察の愚直なまでの徹底が原則となるのです。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『インドでビジネスを成功させるために知っておくべきこと』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。