一般社団法人『Tradition JAPAN』代表で、着物活性プロデューサーである矢作千鶴子氏の書籍『きょうは着物にウエスタンブーツ履いて』より一部を抜粋し、日本の重要な財産である「着物」について考察していきます。

「笑顔」は平和をつくり、品格を育てる

毎回400m走を走るレース後半の私の顔は、眉間のシワが刻まれ苦しい顔ばかりでした。特にゴール直前の顔は最悪で、「私は苦しいのです!!」と絵に描いたような形相でした。

常に監督から「お前の顔はいかん。顔から苦しさに負けている! 最後は笑顔を浮かべて走るくらいになりなさい!」と言われ続けていましたが、私は「嫌いな競技なのに、苦しい最中に笑顔がつくれるか!」そう心の中で言っていたものです。

その後、大学生になり、陸上競技を続けていた私の種目は、800m走と1500m走でした。

距離も長くなり、相変わらずの『眉間のシワ』は健在でした。

休日に、同じ寮生だった体操競技をする友人の練習を観に行きました。演技の後半になっても笑顔で続ける友人に、「どうして笑顔でできるの?」と訊きくと、「得点を争う競技だから、演技の中で表情は大事なの。審査員への印象が得点に影響するから」と答えてくれました。

「特に、誰もが後半は苦しい。けれど、苦しみのどん底の中で笑顔をつくれるということが大事なのよ。苦しみの中で笑顔になった方が、自分に暗示がかかるし」

私はハッとしました。

高校の時に言われたことは、そういうことだったのか!

苦しい時こそ、笑顔になる。

顔は自分の感情を表す鏡だから、苦しい時に苦しい顔をすると、体もメンタルも苦しくなり、力が出ないのか!

それを知った時から私は、猛練習の中で、大会では笑顔で走るようにイメージをつくりました。