ヒップホップに導かれて渡ったアメリカで目にした、現実現代の「個」の在り方を問いかけるリアル・ストリート・エッセイを連載にてお届けします。

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ハーレム・ルネサンス

「ここは素晴らしい場だと思います。若者だけでなく、誰でも年齢に関係なく学べます。人間にとって教育はとっても重要なことです」。

私の言葉を聞きながら、その男性は黙って下を向いている。しばらくして顔を上げ、こちらに向き直った。改めて私の目を見つめ、両手で私の手を包み込みながら彼は言った。“You’reverynice.(キミはとてもナイスな人間だ)”そして最後に、彼はこう付け加えた。

「ハーレム・ルネサンスは本当に素晴らしい。いまキミが見ているハーレムはリアルだし、事実だ。でも、これはごくごく表面的な部分だ。このアンダーグラウンドにはダークでネガティブな部分もたくさんあるんだよ。いろんな問題があるんだ。わかるよな?いい人間はたくさんいる。でもクレイジーで、悪い人間がいるってことも確かに事実なんだ」

家庭が崩壊し、まともに教育を受けられず、ストリートで犯罪に身を持ち崩しながら生き延びる人々、完全に貧困とドラッグに心と身体を蝕まれてしまった人々がいる。しかし、こうして古き良きハーレムを再現し、Hoodの仲間や家族と語り合えるこの場所やこの時間が、もうひとつのHarlemを隠すのではなく、Harlemの一部として受け入れ、やさしく包み込んでいるように私には思えるのだ。

自分たちが背負わされているさまざまな問題から決して目を背けず、Hoodが一丸となりハーレムの発展に力を注いでいる。かつてBlackPanther(ブラック・パンサー)党員だったというこの男性。家族やいとこも皆そのメンバーだった。今年10月には黒人男性100万人ワシントン大行進が行われる。もちろん彼も参加する予定だ。