雪の行先は、生が幽閉されている小屋であった。小屋の周りでは数人の村人が見張っていた。万が一にでも逃げ出させないためであった。雪は見張りの村人に話をすると、一時だけ話す時間の許しを得た。引き戸が開けられ、雪は真っ暗な小屋に入って行った。

小屋の隅には、おそらく恐怖と不安で泣き疲れたのか、生が眠っていた。小さな声で生の名前を呼んだ。生は声の主が誰なのか一瞬で分かったであろう。雪が差し伸べた手を握った。

恐怖は去り、生の表情も穏やかになった。雪と生は幼い頃の楽しい思い出を語った。春の花咲く野山、夏の新緑と湖での水遊び、秋の紅葉の野山、冬の雪遊び。話は尽きなかった。どれくらい話したのだろうか、東の空が白みはじめていた。

雪は「生、白狐と共に生きよ」と生に告げた。小屋を出た雪は、森を抜け、龍神様の祠に走った。その脇には白狐も並走していた。湖の畔に着いた雪は、白狐に命を下した。「ゆき、これまで私と共にあったこと、ありがとう。私はこれから人柱として龍神様の元に行く。ゆきは生と共に生きよ。これからは生と共にこの地を守れ、人も動物もこの泉と共に守れ。解ってくれるな、ゆき」。

まさに東の空が明けようとした時、雪は龍神様の祠に消えていった。