そして、この隕石が発見されてから1か月もした頃、隕石が突然自ら減速を始めたのである。火星天文台の職員が驚きの声をあげた。

「減速しています、減速しています。隕石がスピードを落としています」
「何を馬鹿なことを言っているんだ、隕石が減速などするはずがない。観測間違いだろ」
「いや間違いありません。ものすごい勢いで減速しています」
「このコンピューターのグラフを見てください。間違いありません」

発見されて以来、地球外周観測衛星によってその動きをつぶさに監視されていたが、隕石の突然の減速に宇宙防衛隊は驚嘆。「これはただの隕石ではなく確実に未確認飛行物体=UFOである」と声明を発した。

人類がこの世界に誕生して以来UFOのうわさは紀元前からいくつもあるが、科学的に観測されたのは今回が初めてである。地球代表部は防衛隊からの報告で、宇宙人との遭遇を考え宇宙第一級非常警戒態勢に入ると宣言、すべての組織がいざというときに備えて臨戦態勢を敷く。緊張が続く中今度は、未確認飛行物体から、電波が発信された。

「メーデー……メーデー……」

遥か昔の地球人が使った通信信号である。人類が通信技術を発明し大昔に使っていた通信電波であり現在では宇宙観測以外では使われることはない。

※本記事は2020年12月刊行の書籍『Uリターン』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。