2015年5月:被災地で顕在化するDV

【第1回】で紹介した、「よりそいホットライン」は、私が代表理事を務める社会的包摂サポートセンターが運営する無料電話相談である。24時間匿名でどんな相談も受け、外国語も8カ国語で対応している。震災の年の10月に被災3県から始めた。

幸いにも国の補助金をいただき、今は全国対応で困り事を抱えた方々の悩みをお聴きし、解決に向けて一緒に考えている。気がつけば相談員が2500人、年間で1400万件も電話をいただくという一大事業となった。

被災地、被災者からの相談内容を確認していると、切なくてたまらなくなる時がある。身内を亡くした悲しみや、今晩の食事もできないという経済的困窮、福島を離れて家族が離散せざるを得ない状況。どれもこれも深刻だが、DV(ドメスティック・バイオレンス)相談については、「どうしたらいいか分からない」というのが私の正直な感想だった。まさかこんなことになっているとは。

「殴る蹴る」といったものだけでなく、「家族や友人に会わせない」といった社会的な暴力、「生活費を渡さない」経済的な暴力、「頻繁に罵倒する」精神的な暴力などがある。身近にそんな夫婦はいない、と思っていたら相談員から「加害者は外見では分かりません。世間では立派な人で通っていたり社会的地位の高い人もたくさんいます」と。

考えたら当たり前のことだ。自分の夫が暴力を振るうなどとは人には言えないし、ましてや知り合いもいる「役所の窓口」に相談できるはずもない。DVは見えないものなのだ。DVなど女性の相談は、被災3県は昨年1年で4万5219本もの電話があり、1日120本以上かかってきたことになる。全国と比し相談内容の割合では1・5倍以上だ。