第二部 教団~2

「聞いたことはあるよ。まあ、香奈のやつ、そもそも社会心理とかいう学科に進んだのも、あの先生に傾倒したからなんだな。あいつ、意外と熱しやすく醒めやすいたちなんだ。今じゃ時々愚痴をこぼしてるけど」
「そうだろうな」

風間は薄く笑った。

「君に言ったのはどんな愚痴だい?」
「うん、まあ、よくは分からないのだが、彼が個人的にやっている集まりに付き合わされるらしいのだよ」
「そうだろうと思っていたよ。実はね」

そこからの二、三言を風間は、あたりをはばかるかのように低く呟いた。

「何だって」

村上は思わず腰を浮かしそうになった。

「そんなバカなことがあるものか」
「でも、これは、ほぼ確かだぜ」

風間は閉じたファイルをカバンから取り出して、村上の前に放り出した。

「君が信用しないと思って持ってきたんだ。まあ証拠のようなものだな」

村上は風間の顔をまじまじと眺めていたが、ファイルを開くと読み始めた。読み進むうちに村上の顔色はだんだんと変わっていった。半分ほど読んで、村上は顔をあげた。

「よく調べたな、でも、ありえない話だ。君が調べたのでなければ、誰かにだまされているのかと疑うところだよ」
「最後まで読めよ、きっと……」

電話のベルが鳴り、村上が受話器を取った。