第二部 教団~2

小さいころからよく風邪にかかったものだ。おまけに親が過保護で、風邪を引くとすぐに学校を休ませた。

小学校一年生のとき、欠席日数が余りに多かったので、母が保健の先生から呼び出しを食った。虐待されているのではと疑われたのだが、もちろんそんな事実はない。

学校を休んだときも、さほど熱がなければ、本を読んだり絵を描いたりして過ごした。特に歴史小説が好きで、英雄のエピソードや、ヒロインとの悲恋に熱中した。中学生になる頃には、一人本を読んだり、自己流の小説を書いてばかりいる夢見がちな少年になっていた。

そんな風間にも出会いがあった。地元の高校に進学した風間は、そこで自分と同じような風変わりな少年と知り合った。それが小林だった。

小林は近くの高級住宅地に住んでおりやはり一人っ子だった。学校の休み時間など、小林は風間ほど一人ではいなかったが、それでも余り周囲の人間とは付き合っていなかった。変わった人間で、よくこんなことをいう。

「僕たちの生まれる前に、歴史は終わってしまったんだよ。これからは、ただのっぺらぼうの時間が続いていくだけだよ。こんな時代に生まれたくはなかったね。本当につまらないよ。まあ、君みたいに、趣味の世界に生きるほかに手はなさそうだね」

その小林に、風間が自分で書いた小説を見せたときから、小林は急に親近感を示しだした。

「今度芝居を見にいこうや」

あるとき小林に誘われてくっついていった風間は、これしかないと思った。