ミミは寝る時には、おじいさんの腕をなめまわして、腕まくらでゴロゴロとノドを鳴らしてねむるのだった。おじいさんも、猫缶やら、爪とぎやら、ペットシートやら、ミミのためになる物なら何でも、スーパーめぐりをして買ってやった。ミミがそばにいるだけの何気ない日常が、おじいさんには、このうえない喜びだったそうじゃ。

そんなある日のことじゃった。ミミが「クスッ」とくしゃみをしはじめて、鼻水が止まらなくなったんじゃ。目ヤニもひどかった。あれほどよく食べたのに、食欲がまったくなくなってしもうた。

すぐに近くの動物病院へ連れていった。猫風邪と言われて、注射を打ってもらい、1週間ぶんの薬をもらったそうじゃ。

「けっこう体力が落ちています。もうお歳ですから、どうぞお気をつけて」

さっそく帰って、ジェル状のキャットフードに、つぶした薬をまぶして食べさせようとしたが、まったく口をつけんかった。ミミは、ちょっとした、においのちがいを感じとっていたんじゃ。

「ばあさん、こんな時どうしたもんかのう」

ミミを抱きかかえて途方に暮れた。それから数日、病院通いをくり返した。ミミの食欲がやっともどり、元気をとりもどした。おじいさんは、これから先の不安をかかえながらも、ミミと一緒の時間を、これまで以上に大切にしようと決めたんじゃ。