ライジング・スター

葭葉出版は神保町の真新しいビルにオフィスを構えている。島崎とは午後四時の約束だ。十分前に五階の受付で用件を告げると

「お待ちしておりました。島崎の部屋は九階でございます。ご案内いたします」と言われ、受付嬢と共にエレベータで九階まで昇り、島崎の部屋へ向かった。

「失礼します。芹生様がお見えです」

これほど丁重な扱いを想像していなかったので、俄かに緊張感を覚えた。俺が愛澤一樹の知人ゆえのことなのだろうか。

「やあ、どうも。お元気ですか?」
島崎はにこやかに応接してくれた。

「お忙しいところお時間を頂戴し、申し訳ありません。実は」
「新作の件ですね」
「はい。ぜひ島崎さんにご拝読いただきたく」
「自信作ですか?」
「自分では、そう信じています。かなり心血を注いで書き上げました」
「なるほど。それは楽しみだ。ではお預かりします」

島崎は丁重に原稿封筒を受け取った。

「よろしくお願いいたします」
「ところで愛澤先生とはお会いになっていますか?」
「いえ、このところは。川島もあのような状態ですから、とてもわたしの相手などしていられないでしょう」

「そうかもしれませんね。うちも愛澤先生が立て続けにメガヒットを連発されるお陰で潤っています。この新しいオフィスも構えることができました」
島崎は笑いながら言った。

「でも、愛澤先生にとって、芹生さんの存在はいい刺激になっていると思いますよ」
「どうでしょうか」
「そうですとも。わたし自身は、芹生さんの作品は応募された一作しか読んだことはありませんが、愛澤先生の作品にも影響を与えていると思います」