コンサート

ひまりは津田沼駅からはバスに乗って帰るのだと言う。ちょうどバスが発着所に止まっていた。

ひまりは少し足早になった。そして二人が乗るとすぐに動き出した。アッキーはすぐに空いている席を見つけるとひまりを座らせた。

ここから三十分もかかる。それだけ言うとひまりは、窓の外の夜の景色を見ているばかりで、吊革につかまって立っているアッキーを見ようともしない。

何も話しかけないでと言わんばかりである。三十分もかかるなんて随分と田舎なんだと、アッキーはひまりと同じ夜の景色をバスの窓から見ながら呟いた。

ここで降りるからと、ひまりは立ち上がったのでアッキーも一緒に停留所に降り立った。

「今日はごめんなさい。皆さんがとても楽しそうだったので……」
「大丈夫だよ、気にするなよ」
「私はもうここでいいですから」
「そんな訳にはいかないよ、ちゃんと家まで送るから」

アッキーはあたりをキョロキョロ見回した。しかし、ひまりは動かなかった。アッキーは何だか意味が解らない。