コンサート

ドサッと、女の子とアッキーママの鞄がぶつかった。鞄からはボールペンが少し下り坂になったフロアの床を転がり、口紅までもがアッキーママの足元に落ちてしまった。

誰かに踏まれそうなボールペンと口紅を、アッキーママは慌てて拾い上げた。そして顔を上げると、そこには赤いリュックサックを背負った、まだあどけなさが残る女の子がいた。

その女の子は小さな声だが申し訳なさそうに、ごめんなさいと謝った。アッキーママも、「こちらこそ、ごめんなさいね」と謝ったのだった。

誰もが認める天才的なアーティストの歌唱力、そして迫力感、メンバーそれぞれの個性を生かした壮大な舞台、世代を超えて人気のある有名なバンドのコンサートが終わり、アッキーの家族みんながまだ余韻に浸り、出口に向かって歩いていた時の出来事だった。アッキーは女の子の顔を見ると素っ頓狂な声で言った。

「あれ~、あれ~どこかで見たよね」

赤いリュックサックの女の子はアッキーを見て、何も言葉が出ないでいた。