ぼくもメロンパンが大好き。時々できそこないのかけらが、キャットフードの中に入っている。おじちゃんは、お店が繁盛するようにって、歌までつくったんだ。毎日歌いながら、おいしいパンをつくっている。

“西原村のパン屋”は 世界一たい
ふたりの手づくりで できとるけん
“西原村のパン屋”は ロマン入りばい
楽しゅうて パンば つくっとるけん
パン パン パン ハイできたばい

 

おじちゃんは、歌はもともと音痴だけど、毎日歌っていると、それが当たり前に聞こえるから不思議だよね。

ある夜のことだった。大きな地ひびきとともに、家が急に大きく、ぐらぐらしてきた。ゆれは何分続いたか、わからないほど長く感じたんだ。家じゅうの物がいっせいに倒れてきた。おじちゃんも、おばちゃんも、「わぁーっ地震! 地震だ!」と大声で叫んでいた。

ぼくは急いで店のパン棚の下にかくれた。地震がおさまって、ぼくを見つけると、すぐに抱きかかえて、「ポロン、ケガせんで、ほんなこつ(本当に)よかったなぁ」と頭をなでてくれた。

ぼくは、おそろしくて体じゅうの毛が立っていた。電気もつかなくなった。真っ暗な中、懐中電灯の明かりだけで夜をすごした。おじちゃんも、おばちゃんも、おそくまで、あと片づけでいそがしかった。

つぎの日はパンづくりができないので閉店。さらに、そのつぎの日の夜中、寝ていたら、もっと大きな地ひびきがした。

よこゆれがして、バリバリという音とともに天井からすべてが倒れ落ちてきた。ぼくは間一髪のところで、イスの下にもぐりこんだ。耳を平らにして地震がおさまるまで、じっとしていた。