第2章 障害のある子どもの理解

⑶自閉症スペクトラム障害(ASD)

診断と症状

診断と症状については、DSM―5で、自閉症は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」(ASD)となりました。その診断基準は表のとおりです。

[表]  自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の診断基準

これまで自閉症の診断については、1980年にアメリカ精神医学会(APA)は精神疾患の診断マニュアルのDSM‐Ⅲで、自閉症を精神病の一つとし統合失調症とひとまとめとするのではなく、広汎性発達障害(PDD)と呼ぶことにしました。その後も改訂を重ね、名称や症状、原因について検討されてきました。

イギリスの精神科医のL・ウィングは、自閉症の主なる特徴は3つの障害「人との相互交渉」「コミュニケーション」「想像力の発達」と「反復活動」にあるとしました。単に自閉性といった場合には、知的障害が併存すると思われていたのですが、知能に遅れのない自閉症がいることで高機能自閉症、アスペルガー症候群などとも呼ばれました。

しかし、自閉の度合いに境界線を引くのは難しくスペクトラムと考えるようになり、DSM‐5では自閉症スペクトラム障害(ASD)という言い方となりました。

基本的にASDは個人的要因として脳の機能障害があり、一生涯続く障害といえるのですが、環境的要因の調整や社会適応力を高めることにより症状が軽減してくるとの理解が進んできています。

今では、ASDは脳の中枢神経系の記憶を司(つかさど)る「海馬」や感情を司る「扁桃体(へんとうたい)」の障害ではないかという研究者もいます。