たまに会っても、常にスケジュールを気にしている様子が窺(うかが)え、以前のような盛りあがりはなかった。加えて、川島の態度に徐々に横柄さが目立つようにも感じられた。こちらも先を越された引け目があるので過敏になっていたのかもしれないが。というわけで自分から連絡することはなくなった。

受賞から一年ほど経ったあるとき、久しぶりに川島から連絡がきた。

「やあ元気かい。ところで来週の水曜日に新作の出版記念パーティーがあるので来ないか」

デビュー三作目となる新作長編の出版記念パーティーだという。受賞後の二作目もヒットし、既に新進作家としての地位を固めつつあった。この間、雑誌の連載小説や数編の短編も発表している。このハイペースはいったいなんだろうか。サークル時代から際立った多作速筆ではあったが、上梓(じょうし)にこぎつける作品となると違うレベルが要求される。よくアイデアが続くものだ。やはり才能なのだろうか。

「ありがたいけど遠慮するよ」
俺は断りを入れた。

「忙しいのかい。そうとも思えないが。それに今をときめく愛澤一樹(あいざわいつき)の友人として招かれるなんて光栄だろう」

川島の、被害者遺族に突き出されたマイクのような無神経さに不愉快になったが、気持ちを抑えて応じた。

「いや。あまり華やかな場所は苦手なんでね」

考えてみれば、愛澤一樹というペンネームも女性受けを考えたのだろう。

「まあ、そう言わず。それに紹介したい出版関係者もいるから必ず来てくれ。会場は銀座のホテル星陽(せいよう)。七時からだ。招待状を送っておく」

川島はそう言い残して一方的に電話を切った。

あいつは変わった。川島の変貌を不快に思ったが、実はいつまでも変われない自分への憤(いきどお)りであることは明らかだった。その心根を川島に推量されるのも嫌なので誘いに応じることにした。「紹介したい出版関係者」というのも気にかかる。