その直後から、容体は一層悪くなり、原因不明で応急措置が続けられた。この間、処置室に立ち寄ったE看護師は、処置台の上に「ヘパ生」とマジックで書かれた注射器があるのを見つけ、それに自らが書いた「F子様洗浄用ヒビグル」というメモが貼ってあるのを発見した。

ここで、ヘパ生ではなく、消毒液ヒビグルが誤って注入されたのではないかと気づいたE看護師は、病室に戻り、H医師を呼び出して、「ヘパ生とヒビグルを間違えたかも知れません」と告げた。その直後、患者D子は意識を失い、同日午前9時30分頃、心肺停止状態になった。

H医師と他の当直医M医師が心臓マッサージ、人工呼吸を行った。同日10時25分頃、連絡を受けて駆け付けた主治医C医師が心臓マッサージを行ったが、その際に、当直のH医師から状況の説明を受けるとともに、「看護師がヘパロックする際にヘパ生とヒビグルを間違えて注入したかもしれないと言っている」と聞かされた。

また、主治医C医師は心臓マッサージの最中、患者D子の右腕に色素沈着のような状態があることに気づいていた。蘇生の気配がなかったため、主治医C医師は、親族に現在の状態を説明するとともに患者D子のもとに伴い、親族の意向も聞いて、蘇生措置を中止し、平成11年2月11日午前10時44分に死亡を確認した。

主治医C医師は、死亡原因は不明として、解明のために病理解剖の了承を求めた。親族から、患者D子の急変の原因として誤薬投与の可能性の質問があったが、C医師はわからないと答え、看護師による誤薬投与の可能性を伝えないまま、病理解剖の了承を得た。

②  患者D子の死亡した2月11日は祝日であり、院長である被告人は外出していたが、午後7時頃、外出先から自宅に電話を入れると、N庶務課長から電話が欲しいとの伝言があった旨を聞き、直ちに、N庶務課長に電話をし、説明を受けた。

驚いた院長(被告人)は、午後8時頃帰宅、P看護部長に電話をし、説明を受けた。院長(被告人)は「これが事実とすれば大変なことで、事実関係の調査と今後の対応が必要なので、明日の朝、対策会議を開きましょう。」とP看護部長に伝えた。

③翌日2月12日午前8時頃、主治医C医師が院長室に赴き報告。8時30分頃から対策会議 が開かれた。出席者は9名(院長、K副院長、Q副院長、J事務局長、P看護部長、L医事課長、N庶務課長、R看護課長、O看護副課長)で、E看護師から説明を受けた後、 主治医C医師が呼ばれた。

C医師は、E看護師がヘパ生とヒビグルを間違えたかもしれないとH医師に伝えたこと、心筋梗塞の疑いもあること、病理解剖の承認を貰ったことなどを説明した。協議の結果、警察に届けると決まった。

※本記事は、2018年12月刊行の書籍『未来の医師を救う医療事故調査制度とは何か』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。