序章

アトランティスとレムリア。

対立の構図は、この時代にまで遡る。

物質文明を開花させたアトランティス。

精神文明を育んだレムリア。

この2大文明の相剋の歴史は長く根深い。

1万2千年前。

この星に大惨事が降りかかる。巨大な隕石の衝突だ。

凄まじい衝撃が

大津波となって駆け巡る。

陸地という陸地はほぼ水没。

陸地に生息していた生物は絶滅。

2大文明も滅びたかに見えた。

しかし……

それぞれの文明に属する者たちはそれぞれの方法で生き延びる。ある者たちは空中に浮かぶ舟に。

またある者たちは地底都市へ。

地表に静けさが戻ると双方の文明の継承者たちは、ふたたび文明を築き始める。

物質文明の継承者は、大西洋の島々で。

精神文明の継承者は、太平洋の島々で。

各々のDNAに書き込まれた遺伝子情報をもとに。物質文明の血脈の継承者は体格もよく好戦的。

精神文明の血脈の継承者は小柄で和を重んじる。

劣等感。あるいはコンプレックス。

もしもどちらかが

そんな感情を抱くとするなら。

体格も劣り、物質的にも豊かではない人々のほうだろう。

だが、実際にそんな「負の感情」を抱き続けてきたのは物質文明の継承者たちなのだ。

繰り返される開拓という名の略奪。

近代化という名の侵略。

民主化という名の現状変更。

戦争の戦利品。それは……

国土や資源だけではない。

その国の歴史までをも奪簒(さんだつ)する。つまり人類史とは戦争の勝者の歴史にほかならないのだ。