監修者まえがき

私は日系の大企業で営業としてキャリアをスタートしました。元々、知らない人と話すのはそんなに得意ではなかったにもかかわらず、やればやるほど営業の楽しさや奥深さにはまっていきました。

それは「他の人が知らないことを伝えて説得して喜んでいただく」「数字という明確な結果で社内外の人と競争できる」といった要素が新卒の自分にはとても心地よく、成長を実感する感覚を持てたからです。

私の最も尊敬する営業は、半年間見込み顧客の通勤を待ち続け、挨拶を無視され続けながらも通い続けた当時の先輩です。

その方は、何も答えがない中でも挨拶をすれば、いつか道が開けると己を信じて挨拶をし続け、見事に半年後の朝、いきなり近寄ってきたお客さんに「あなたの会社の製品に全て変えた」と言わせて大口顧客を制しました。

「気合いと根性」と言えばそれまでなのですが、意外にも営業(あるいは全ての職種)においてとても大事な要素だと思っていましたし、今でもそう思っています。

ただ、このような先輩の背中を追いながら自身も営業活動をしていく中で、売れている人と売れていない人の差はなんなのか?という問いに常につきまとわれていました。

「営業を科学する」というようなことが言われ続けて数十年経つものの、SFA(セールスフォースオートメーション)やMA(マーケティングオートメーション)、またオンライン商談やインサイドセールスの普及くらいしか大きな変化はなく、顧客と相対している営業の行動の中身は特に変化などはないように思います。

そのようなモヤモヤを抱えたまま、米国で勤務し、そこで初めて「セールスイネーブルメント」という言葉と出会いました。当時、タブレットに営業コンテンツを入れられるようなツールがブームであり、私がいた会社でも導入しました。そのツールがセールスイネーブルメントツールを自称していたこともあり、初めて聞くその言葉をさんざん調べ、その結果、「よくわからない」という結論に至ったのはよく覚えています。