序章  新しい「ホスピタルフリー・サバイバル」

サバイバルという用語――6通りのサバイバル

がんと診断され治療を開始してからの患者さんの生存(サバイバル)期間は、生活の質を考慮すると6通りあります。

(1)「全生存期間」――オーバーオール・サバイバル がんと診断されて治療開始してからのすべての期間。

「サバイバル」は「サバイバル・ゲーム」という言葉でも分かるように、困難な状況や危機的な状況にもかかわらず、何とかして生き残ることを指します。

臨床研究(ヒトを対象とした医薬品の安全性と有効性を調べる研究)では抗がん剤治療の評価をする時、「A治療はB治療より全生存期間が長いからA治療の方がB治療より優れている」と考えます。

(2)「無病生存期間」――ディジーズフリー・サバイバル 病気がなくなったと考えられる期間。

「フリー」は「タックスフリー」(税金がかからない)のフリーと同じで、「ディジーズフリー」は、「病気がない」という意味になります。

(3)「無再発生存期間」――イベントフリー・サバイバル 病気の再発がない期間。

「イベント」は出来事という意味で、イベントフリー・サバイバルは「再発という出来事がない期間」となります。

(4)「無増悪生存期間」――プログレッションフリー・サバイバル 病気が進行していない期間。

「プログレッション」とは進行という意味ですから、これは分かりやすいですね。

優れた治療法を見つけるための臨床研究では、すべての患者さんの全生存期間を知るには時間がかかるため、無病生存期間・無再発生存期間・無増悪生存期間などを全生存期間の代用にする場合があります。