第二章 招魂と入れ替わり

私は名前を出されたので、自分で名乗らなければと、畏まった。

「ええーと、洋子です。致高様、こんにちは」

致高様の時代の自己紹介はわからないので、精一杯の笑顔で名乗った。

「洋子と申したな、城も無く家臣も居ない身共(みども)に、何をさせたいと思っているのだ」と致高様は致嗣の顔で聞いてくる。

「タマ、いや蔵人から生前の致高様の有り様を聞くに付け、新たな世界ではありますが、もっと楽しい事を経験してもらいたいと思ったんです」と私は答える。

「ほぅー、それはどんな事か、詳しく話してみよ」

「差し当たっては、近隣の様変わりした様子をご覧戴き、そして今の世では十五歳はまだ子供で思う存分遊んでもいいということで、色々な遊びをお教え致します。……今日はもうすぐ夕方になりますから、ひとまず致高様が憑依されている体の持ち主、水野致嗣の家にお帰りください。

その者の父親もおおよその経緯(いきさつ)は知っていると思われるので、心配なく安心して彼(か)の者の家でお休みください。明日、お迎えに行きます。私は致高様と一緒にしたい楽しい事を調べておきます。タマ、後はお願いね」つっかえながらも私は話し終える。

「洋子とやら、身共の事を気づかってくれている事については一言礼を申しておく。今はまだ全部は理解しがたいが、お前が一生懸命なのはわかった。蔵人と帰った後は、暫し語らおうと考える」

そう言うと致高様とタマは連れ立って帰って行った。

私はまた前と同じでひとりで片付けをしたが、明日の事を思って弾む心でしたせいか早く済んだ。家に帰ってからも明日は何をしようかと考え、ウキウキしてなかなか寝付けなかった。