そう言い捨てると、イムフラの指が木の枝となりグラド目掛け何本も伸び、グラドの胸や頭部を刺した。グラドは体を土へと変化させようとしたが、土化したのは手足の先だけで間に合わなかった。

イムフラは枝になった指を抜くと同時に、グラドはその場に崩れ落ちる。頭部の指を抜くと種が刺さっていた。あまりに一瞬の出来事で、呆気にとられていたが王の近衛兵が剣を抜きイムフラに向けた。しかしイムフラが全ての近衛兵に枝になった指を伸ばし、兜の眉間を狙って刺した。近衛兵らは避ける間もなく皆、その場に崩れ落ちた。

イムフラは、ゆっくりと枝になった指を元に戻すと周りの兵らに向け大声で叫んだ。

「これで逃げてばかりいる弱い邪魔者はいなくなりました。予定通り、太陽の国へ攻め入ります。カーに怯えた生活は、もう金輪際終わりにしましょう!」

そう言ってイムフラが腕を上げ大声で叫ぶと兵たちは皆、腕を上げ答えた。全てはイムフラの思惑通り進み、イムフラは地の国の王として皆に認められたようだった。

10. MONDO カイユの夢

カイユは公園のシーソーに乗って遊んでいる。カイユの背後で父親が落ちないように支え、向かいには母親が乗っているが、二人とも顔はボヤケていて、よく見えなかった。皆の笑い声が聞こえ、楽しい感情にカイユは包まれていた。しかしよく見ると母親の前に誰か、女の子が座っているようだが、シルエットだけで全体がボヤケていてよく見えなかった。母親がその女の子を後ろから守るように手で抱え座って言った。

「ビィオラ落ちないようにね」

カイユはその子の名がビィオラと分かったが、顔を見ようとしてもボヤケて見えなかった。

次に場面が変わると夜だった。雨の中、両親は背を向け家から出て行くところだった。カイユが叫んでも二人とも振り向く事はなく霧の中へ消えて見えなくなった。

 

カイユは悲しい気持ちのまま目を開けると、電車の中で隣で眠っている人が居た。

カイユは、その人に凭れ眠っていたようだった。バナルバかと思ったが男性用の黒い革靴、スーツ姿で顔は深々と被られた帽子により隠れていた。一瞬、ジルかと思い飛びつこうとしたが、背が異様に高かった。カイユは、まさかと思いながら、恐る恐る帽子をずらし顔を見ようと触った瞬間、「起きたか」と声がした。

【前回の記事を読む】頭の中の記憶から兄の行方を幻視してもらうと霧に覆われた…

【イチオシ連載】結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる

【注目記事】私だけが何も知らなかった…真実は辛すぎて部屋でひとり、声を殺して毎日泣いた