我輩は清掃人じゃ

3.安住隆史との邂逅・第二段階突破?

「それはまぁいいけど、とにかく、清掃も命懸けでやる仕事ですよ」

いやはや、大変な会社に就職してしもうた。我輩まで蹴りを入れられ、ひびでも入ったら、ただでさえ足の悪い我輩は、寝たっきりになってしまうのじゃ。仕事どころでありゃへんがな。ただただ恐怖心が沸き起こってきたのじゃ。

しかしの、上司を信頼せねばならん。ここはブラック企業なのかわからんが、収入の問題は死活問題になりうるわけで、せっかく見つけた清掃業務、手放してはおられん。まぁ、ゲスの勘繰りはやめて、仕事仕事、仕事始めじゃ。やらねばならん何事も。我輩はここにお世話になるべく選ばせてもらったので、意識を強く持って邁進せねばならん。

「安住殿。いちおうの段取りというものを教えてもらえんかの。死んだ気になって覚えるのでな」

「じゃ、とにかく、さっき見せた、箒やちりとり、モップ、バケツ、雑巾などを持って、最上階まで階段で上がります。足が不自由みたいですね。階段は大丈夫っすか?」

「安住殿。我輩はの、これしきの試練には負けんのじゃ。お主にも言うとくが、試練というものは、超えるためにある。壁を乗り越えるのじゃ。お主も経験がござろう?」

「安住殿がお主に降格されちゃった」

「すまぬ、ランクを下げてしもうた。別段、馬鹿にしてるわけでもなし、よかろう?」

「まぁいいけどさ」

「とにかくお主とは長い付き合いになりそうじゃ。それに、意外と誠実そうじゃの。よろしくお願いしますでござる」

この安住との出会いは、年齢が離れていても、何か深い繋がりがあるのだろうと、衝撃的なご縁を感じ取ったのじゃ。

「大人さん、そろそろ行くよー」

「すまぬすまぬ、今、行くぞよ」

我輩の両足の不具合は、すでにマックス状態にまで陥り、階段の上り下りだけでなく、清掃自体が可能かどうか、不明瞭な視線が点在し、歩行不可能になって、残念でも、諦めなければならない恐怖が、むくむくといきり立ってきた。困ったもんじゃ焼き(笑)

ヒーハーヒーハー言いながら階段を、間違いが及ばないほどゆっくりと一段ずつ、上がっていった。エレベーターすらない五階建てのビルで、足が棒になるどころか、野球の木製バットになってしもうたようじゃ。初日からこれじゃ、先が危ぶまれるのじゃ。困ったのう。再度、困ったもんじゃ焼き(笑)

「大人さんね、この蛇口を使って、まずは雑巾やモップやバケツを洗ってから、バケツに水を入れて、階段のある最上階の踊り場から箒で掃く。それは俺がやるから、モップがけで追いかけてきて。競争じゃないし、時間内なら手を抜くわけじゃないけど、ゆっくりね。

モップがけするときには、近くにバケツを置いてやればいいし、とにかく、上からこぼさないように注意することっすよ。じゃ、始めるよー」

「了解じゃ」