春を呼ぶ少女

さくさくと雪を踏みしめながら、ひとりの少女が真っ白な馬をひいて歩いていました。淡い水色の空がどこまでも広がり、降り積もった雪は太陽の光でキラキラと輝いています。

「おはよう、リリーちゃん。それにフルールも。今日は早いのね。どこかにお出かけ?」

仕立屋の店主が、窓から顔を出しました。馬をひいて歩く少女の名前はリリー、白い馬の名前はフルールといいます。

「おはようございます。フルールが、『走りたい、走りたい』ってうずうずしていたので、村はずれの雪原まで」

フルールが、ふん、と鼻息を荒くします。それを見た仕立屋の店主は、くすりと笑いました。

「そうなの、行ってらっしゃい。あ、そうだわ。帰ってきたら、おやつを食べにいらっしゃいな。この前、珍しい紅茶をもらったの」

「いいんですか? それじゃあ、ぜひ」

「待ってるわね」

「はい、行ってきます」

彼女は、にっこりとやさしい笑みを浮かべると、手を振って見送ってくれました。リリーは、フルールをひいてまた歩き出します。しばらくして出会ったのは、農家の夫婦でした。春に向けて、せっせと土作りをしています。

「おや、リリーちゃん、おはよう」

「フルールもおはよう。相変わらず元気そうね」

「おはようございます。おじさん、少し前に腰を痛めたって聞きましたけど、もう大丈夫なんですか?」

「ああ、ちょっとしたぎっくり腰さ。今はもう、この通り」

にかっと笑うその姿を見て、リリーも「よかった」とほほ笑みます。

「私でお役に立てることがあったら、いつでも言ってくださいね」

「ありがとうね。暖かくなったら、ぜひうちの娘たちと遊んでやってほしいな」

「ええ、もちろん」

フルールも、同意するようにうなずきます。

「ちょうどさっき、そろそろ春が来るわね、って話していたところだったの。今年はいつ頃かしら?」

「今年は、あと三日で春を呼べます」