三 学校の相対化現象

―見放される公立学校―

(2)〝まさか〟はなぜ起こったか

私学も同じようにやってくるが、真剣味がまったく違う。私学は生徒を集めるのに必死である。特に地方では、まだまだ公立志向が根強く残っており、大半の生徒を公立に取られてしまうから、ターゲットを絞ってくる。 

例えば、不登校の生徒への具体的対応だとか、特別な支援が必要な子への合理的配慮などを真剣に訴える。

それに対して公立高校は、実にあっさりしたものである。進学校やそれに準ずる高校は、大学の進学率や有名大学に合格した人数ばかりを強調する。そういう学校は一定数の生徒を確保できているから、さほど危機感がないのだろう。

実際、公立志向が強い地域では、小学校のトップレベルの子は私立中学校を受験しないことが多い。それは、公立高校の中でも超進学校への進学に望みを残しておきたいからだ。超進学校はそれがわかっているから、特に何もしなくても受験者は必ず集まるという自信がある。

それに、生徒のなかには、無謀な挑戦をしようとする者も少なくない。だから、超進学校に続く二番手の学校は、超進学校の〝おこぼれ〟に期待できる。

保護者としても自分の子にぎりぎりまで頑張らせて、もし成績が伸びなかったら、そのときに二番手の進学校を選んでも遅くないと考える。二番手でも有名大学への進学率はそれなりにあるからだ。

塾も〝超難関校〟に一人でも多く合格させて実績を残そうとするから、「最後まであきらめるな」と発破をかける。

それにしても、大学進学率などは、わざわざ高校の職員に来てもらわなくても、ちょっと調べればわかることだ。せめて、自校のビジョンくらいは語ってほしいものだと思う。

実業系の高校も大差はない。話題に出してくるのは大学進学に関することが多い。実業系の高校が持っている大学の推薦枠の成果を強調するのだ。

そして、公立高校から来る人の多くは、話し方もどこか事務的である。来校するのは教頭か進路指導部長だが、まるで、ノルマをこなしているかのようにも見える。

それでも、なかには熱心な公立高校もある。最近では公立高校の統廃合が進んでいるので、毎年定員割れを起こしている学校にはそれなりの危機感がある。そういう学校は、進学校よりは丁寧である。

しかし、最後に決まってこう言う。

「いい子を送ってくださいね」

馬鹿にしているのか!と思う。

私は、そういう言い方をされると必ずこう答えることにしていた。

「ええ、大丈夫ですよ。ウチの生徒はみんないい子ばかりですから」

すると、ほとんどの場合、相手は半笑いになる。「そんなはずはないだろう」という反応である。あるいは、私が冗談を言っていると受け止めているのかもしれない。

その点、私学は一人でも多く自分の学校に来てもらいたい、せめて受験だけでもお願いしたいと思っているから、話が具体的になる。