高まるパニック感を押さえながら、私はフランクに連絡して無事を伝えようとした。彼は私の声を聞いて喜んでくれたが、彼にも別の問題が発生していた。

サイエンス誌が連絡してきて2009年10月に発表した私たちの論文を全面撤回するよう圧力をかけてきたというのだ。

この論文では新しい種類のヒトレトロウイルスを分離したこと、それにこのウイルスと慢性疲労症候群との関係性を論じていた。今まで述べた理由から、私たちはこの闘いが避けられないことが分かっていた。

もし、私たちのデータが認められたなら、その結果世界の大手製薬会社は巨額賠償債務による財務破綻に直面するに違いなかった。

すなわちワクチンや他の製剤を製造するのに彼らは危険性のチェックを怠って動物の細胞を使うという過失を犯したからだ。刑事事件専門の弁護士によると、法廷での闘争はいつも動機とチャンスについてだという。

読者には動機をお示しした。

マウス白血病ウイルスによって創り出されたチャンスについてお話ししよう。

2006年3月にクリーブランド病院で評判の高いロバート・シルバーマン博士とそのチームは前立腺ガンの患者から採取した細胞のサンプルにマウス白血病ウイルスに関係する核酸長鎖状高分子を発見したと発表した。

彼らはこのウイルスをXMRV(マウス白血病ウイルス)と名付けた。ウイルスがガンの原因かもしれないという考えは広く支持されてきており、医薬研究の分野で最も活発に研究されていた。

この新しいヒトレトロウイルスが急性の前立腺ガンを引き起こすというシルバーマンの論文には1つだけ問題があった。彼らはそのウイルスが感染するとか他に転移することを示すためにウイルスを分離したわけではなかった。

彼らはマウス白血病ウイルスの数百の塩基対を発見しただけで、その後生体から切り取ったDNAの数百の塩基対を使って、実験室で残りの8000の塩基対を複製したのだった。

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