序章

私は自分が21世紀の科学界における最大のお騒がせ人間の一人になるとは思いもしなかった。

常にデータを追い、患者に耳を傾けることが私の仕事だった。問題解決によって人類を救うことが科学者の仕事である。それこそが私たちの使命であり、そのために人生を捧げてきた。慢性疲労症候群や自閉症、神経の病気、ガンなどについてこれほど議論が対立する状況になっているのに、医学界の多くの人々がこれらの病気の原因から目をそむけるのはどういうことだろうか?

なぜ知恵を出し合って、これを解決しようとしないのか私には理解できない。私の考えは正しいかもしれないし、間違っているかもしれない。いろんな考えを集めて詳細に検討し、どうなるか見てみるべきだ。

私が研究室で、現代における最大の感染症エイズウイルスの大流行を解決するためにエイズ薬を開発していて大発見をしたときですら、栄光や名声を求めていたわけではなかった。

それは人の命に関わることだった。

そのことで私は最高の満足感を得ることができた。

私自身スポットライトを浴びたいと思う人間ではないと思う。研究所で働いていたときはいつも朝の5時には出勤し、夕方の6時まで帰ることはなかった(カムデンヤードで野球があるときは別であるが)。私は多くの科学論文を読み、この分野で活動する最高レベルの人たちが何を発見しているのかを理解しようとしてきた。

気晴らしには野球観戦が好きで、私がよく野球帽をかぶるのもそのせいだ。リラックスできる。他にはバスケットボールやフットボールが好きで、長年にわたり「文無し野郎のヨットクラブ」(実際はピアポイント湾ヨットクラブという)とふざけて称したクラブに所属していた。夫や友人たちとともに太平洋にヨットで乗り出して楽しんだものだ。

ガン患者を支援するいくつかのグループにも参加し、研究者としての知識を生かして、医師の提示するいくつかの療養方法につきアドバイスして援助している。

こういう生活をしている私を警察が2011年11月中旬に自宅を家宅捜査し、そのあげく5日間も保釈することもなく拘置所に勾留した。理由は全くわからない。私は人を殺したわけでもない。私は外国のスパイでもない。

事実、犯罪を犯したとして裁判にかけられたことも一度もない。私に対する申し立てはカリフォルニアの早朝によく発生する霧のように消えてしまった。私の犯した真の犯罪とは一体何なんだろうか?

この疑問を解決する鍵は、天使の街、日差しのまぶしいロサンジェルスに1934年に発生した事態にあると私たちは考える。