まだ幼かった兄弟を母親代わりになって育てたのは母方の祖母ヨランダであった。祖母は少しばかりの農地を耕し、数頭の牛と鶏を育てながら生計を立てていた。

ライアンとタイラーはいつも牛のミルクと鶏の卵を集め、祖母を助けた。そんな兄弟と仲良しだったユージンはいつも二人を温かく家族のように彼の家に迎え、一緒に夕飯をともにした。ジュピターにとっても彼らは幼い頃から馴染みの家族だ。

彼らの家はユージンの家から一キロほど離れたところにあった。こんもりとした林に囲まれた低地にあって天気の良い日には林の中からあがる夕餉(ゆうげ)の煙が見えた。

その谷間の小さな林を目指してユージンとジュピターは駆け降りた。先を駈けていたジュピターの姿が見えなくなっていたので、「ジュピターはもう着いているに違いない」と思いながら走った。

ユージンがトムの家に着いたとき、ジュピターの姿がそこにはなかった。しばらくするとジュピターは裏の雑木林の中から戻ってきた。何か見つけたらしく、ユージンを見るとジュピターはまたすぐに裏の雑木林のほうに戻っていった。ユージンもジュピターの後を追って雑木林の中に入った。

雑木林の中をしばらく行くと皆でよく遊んだ岩山がある。その岩山には洞窟があった。そこは彼らの絶好の隠れ家であり遊び場だった。ジュピターはどうやらその隠れ家で彼らを見つけたようだ。そこで祖母と二人の兄弟は無事に身を潜めていた。

盗賊達が村を襲ったとき、二人の兄弟は祖母の手をひいて裏の雑木林に逃げ込んだ。そしてこの洞窟で身を潜めていたのだ。三人とも無事だった。

ユージンとジュピターを見ると三人は恐怖と緊張から解放され安堵した。貧しそうな彼らの家の様子を一見した盗賊達はすぐに立ち去ったらしい。

その夜、トムも加わってみんなでユージンの家で身体を休めた。疲れ切った子供達を癒すようにヨランダは彼らに温かい鶏のスープと米線(米粉のヌードル)、そして近くの森で採れたキノコを使って食事を準備した。

それらを口にすると、ユージンとジュピターの帰りを不安そうに待っていたラニーとリチャードにも少しばかりの笑顔がもどった。

【前回の記事を読む】「お兄ちゃん、ママが…恐ろしい男達が来てママを連れて行った」