哀瞳のレムリア

有史以前、氷河期よりもはるかはるか太古の昔、

この星にはレムリアという文明があった。

その足跡は世界中に散っていった、

海のように青い宝石が砕けたように……。

そして現代を生きる人々の魂へ

静かにその記憶の波を送り続けている。

 

ナスカ

『本日午前2時26分に妻が他界しました。生前に彼女がお世話になった方へご連絡させていただきます。在職中から退職後も、最後まで妻を気にかけていただき、本当にありがとうございました。通夜、告別式を行いますので、勝手ながら日程を送らせていただきます。ご参列いただけましたら幸いです』

このメッセージが来た夏の日を忘れることはないだろう。ちょうど休みでハワイのラニカイビーチに来ていたときだった。

「ああ、ついにこの日が来てしまったんだなぁ」と思い深く目を閉じた。

送り主の〝夫〟にわたしは会ったことはない。この亡くなった〝妻〟とは、わたしの勤務する会社の後輩で、年下のある女性のことである。

「〝かんべなすか〟です」

入社したときに他の新人同期数人と共に明るく挨拶していたのを覚えている。

そしてもらった名刺をよく見ると〝神戸奈洲香〟と書かれていた。

「なんか神話に出てくるような名前ね!」

「両親が南米ペルーのナスカ平原に新婚旅行へ行ったんです。それで〝なすか〟という名前になりました」

「それは素敵ですね! よろしくお願いします」

部署は違ったけれど、同じフロアだったので、普通に挨拶は交わす仲だった。

「来週、友達とハワイへ行くんです! 初めてなんですよ」と社会人一年目に嬉しそうに言っていたことがあった。

「そう、楽しんできてね」

「どこかご存じのお勧めの場所はありますか?」

「わたしもそんなに知っているわけじゃないけど、カイルア地区は? ファーマーズマーケットもあるし、カイルアビーチもラニカイビーチもきれいだし」

そんな話をしたことがあった。

戻ってきた彼女は残念ながらカイルアへは行けなかったと言いながらお土産を持ってきてくれた。

「次に行くときには、必ず行きたいと思います。新婚旅行で行けたら!」と笑顔で語っていた。

その後、何か体調不良でしばらく休むことになったという知らせは聞いたものの、詳しい状況はしばらくわからずにいた。

どうもかなり深刻な病気らしいという話が耳に入ったのはそれから半年してからで、白血病だったと……そしてやがて退職に至ったということがわかった。