「ここにいるのはあたしのパパ。今日はあたしの誕生日なの」

と笑いながら、彼らの出足を挫かせた。彼らはその免許証を調べた後、2人を行かせた2人が家に戻って私が包囲されていることが分かった。海上経由で脱出するのが残された方法だった。

「エリザベス、あなたボート乗り場に行って頂戴。奴らにあなたを見させるのよ。デービット、あなたはベビージョナ号で出航できるよう準備して頂戴」

「僕ボートなんか乗りたくないよ」とデービットは文句を言った。

「あなたは娘の誕生日だから彼女を連れてボートで出かけるの。彼女をランチに連れて行くって約束したでしょ」

彼は言うことを聞いてくれ、私は家の中で外部から発見されないよう窓に近づかないようにしていた。2階に上がりバックパックに荷物を詰めた。そうこうしているうちに午前11時近くになった(正午には潮が引く)。

デービットが戻ってきてボートの用意ができたと言ったので、私はエリザベスが何を着ているかたずねた。

「なんだったけなあ」と彼は答えた。

うんもう!という感じだった。この数週間私がどんな目にあっていたかを考えたら、彼らにはこの状況がはっきり分かっているはずなのにと思った。デービットは出ていき、戻ってきて、彼女は黒のヨガパンツと黒っぽいTシャツを着ていると言った。

私は同じようなかんじの服を探し、ある患者さんからもらった「アホには我慢できない」と印字されたダークブルーのTシャツを選んだ。包囲されているときにはちょっとしたユーモアが必要だよね。

その日は風が強かったこともあり、ちょうど私の友人のボート番号が印刷された野球帽で同じようなのが2つあったので、エリザベス用にとデービットに1つを渡した。

「いい、よく聞いてね。帽子を彼女に渡して、ボートのところに2~3分行き、エンジンをかけるの。エリザベスにランチに行こうと声をかけるの。彼女は寒いので行きたくないと言うわけ。あなたは家の中に戻ってジャケットを着ておいでと言うの。そこで私たちが入れ替わるのよ」

デービットは理解したようだが、ばかばかしいと思っているようだった。5分くらいでこの手順が実行され、エリザベスは家に歩いてきた。私は彼女の着ている物を確認しジャケットを羽織ったが、2人ともほぼ同じようだった。

数秒待ってバックパックを手に私は裏口から船乗り場へ歩いた。私はボートに乗り込み、デービットは係留用のロープを外し、ボートは左岸の防潮堤に沿って水路を進んだ。

メインの水路に来るとデービットはアクセルを踏み込んだ。彼はこの13フィートのボストンホエラー社製ボートをとばすのが好きだ。彼は私のほうを見て、いつものふざけたロシア人風の訛りで言った。

「カトリーナ、わしら脱出でけたで。そやけどどっちへ行ったらええのかわからへん。どないしょう?」

【前回の記事を読む】私はなにかトラブルに巻き込まれるのだろうか?大変なことが起こりそうな予感が…