第一章 「刑務所が足りない!」

「この刑務所の前身はあの大戦で戦犯の収容先として名を馳せた巣鴨プリズンです。そして更にその前身は寛政二年の江戸時代の加役方人足寄場(かやくかたにんそくよせば)に由来するとものの本に書いてありました。定員は二.八四二人で敷地面積は、二六二.〇五五平方メートル、坪換算でざっと八万坪といったところです。

総延長が一・八キロを高さ五・五メートルの塀で囲まれており、ここは文字通り塀の中です、といったところが役所のホームページ等で公表されております。

それではこれから主な施設をご案内致します」と言って所長は二人を案内し始めた。

「現時点では定員を守れているのですか?」桜田が須崎に質問すると

「はい、今日現在は定員とされている二、八四二人を下回る二、八二九人となっています

コロナ禍のお陰の様なものなのですが、外国人犯罪が多発していた時は、定員を最大で二割近くオーバーしていた事があり、現場を預かる者として、人権上、国際批判を浴びかねないので早急に改善してほしい、せめて定員は死守してほしいと要望しておりました」

と詳細に説明してくれた。

「今は、日本人と外国人との割合はどの程度なのですか?」団が質すと

「今は、日本人収容者が全体の八割、その他外国人が二割で外国人の四割がC国人、三割がV国人となっています」とまた詳細に説明してくれた。

「厳罰化が推し進められているのに、何故刑務所への入所者が減らせているのですか?」と桜田が核心を突く質問を投げ掛けた。

「……正直に言わせて頂くなら減らせているのではなく、調整していると言った方が正解です。その一例が二〇〇六年五月二六日施行の窃盗罪です。

それまでの日本では、『貧しいから人の物を盗む、だから窃盗罪に罰金刑はなじまない』という考えだったものを万引きの横行等により、窃盗犯にも『罰金刑を課すべき』と考えを改め罰金刑を導入した事で刑務所へ入所する者を減らしました」と窃盗犯に罰金刑を設けた事を挙げ、須崎が解説してくれた。これに加勢する様に団が

「我々検察も最大限不起訴処分や起訴猶予処分を多用して、刑務所の事情に配慮している。加えて裁判所も公判前に傷害致死罪犯に自殺された事件に代表される様に、今までと打って変わって柔軟に保釈に応じる様になり、国外逃亡される様な事案まで起きている。それが日本の司法界の現実だ」と吐き捨てる様に言った。その時、桜田は異様な光景を目にした。