従って、腰痛症治療での私の方針は、頭蓋骨から頸椎・胸椎・腰椎・仙椎・膝関節・足関節・肩関節・肘・手首・指関節を俯瞰的に観察・触知して、腰痛を訴える患者さんの腰痛の原因が何処と何処にあって、それが内臓性疾患を原因とするヘッド氏帯反射である筋硬結であると考えられる場合には、先ずその内臓疾患・内臓強化の処置をしてから、実際に組織が硬化している部位の組織緩解を図る、という事になります。

前置きが長くなりましたが、私の臨床経験から、腰痛の多くが内臓疾患の治療をする事で治ってしまうという事実があるのです。因みに、男性の腰痛患者の多くは、胃や肝臓や前立腺のトラブルを抱えており、女性の腰痛患者の多くは、骨盤内臓器の疾患や冷えや瘀血(おけつ)を抱えています。

そして、腰痛の原因が何処にあろうとも、最終的には、骨盤調整或いは仙腸関節調整をすることによって、腰痛が快方に向かいます。人間が直立歩行をする事によって骨盤には、体全体の構造的な矛盾・無理のしわ寄せが掛かってしまっているからです。この間の理論付けでは、五味先生の骨盤調整理論が優れています。

5.腰痛症の診断法

・脈診と良導絡測定腰痛患者には、肝経と膀胱経に異状が触知できます。又、三焦経や肺経に異状を触知する事もあります。急性期で自発痛が顕著の場合には、心経の洪脈を伴います。

良導絡測定では、上記諸経絡の左右差が顕著に測定されます。特に、三焦経の顕著な左右差は、肩甲間部と仙腸関節部の捻れを意味します。これらの所見に加えて、背部兪穴を触診して、腰痛の原因や誘因がどの経絡上の組織、器官、臓腑にあるのかを判断します。

肝経と膀胱経の異状は、脊柱起立筋の一側線の触診で容易に判断できます。(岡山の近藤哲二先生が、その著述の中で、肝経は膀胱経の一側線で吻合ふんごうし、胆経は二側線で吻合ふんごうすると看破されている事は驚愕すべきで、臨床での応用が期待できます)

又、消化器系に異常があると、胃経と脾経の左右差が顕著になり、背部兪穴である、胃兪と脾兪に硬結を触知できます。良導絡測定では、脾経と胃経の左右の測定値を線状で結んだ場合に同方向の傾斜を示す時は、測定高値側の、脾経や胃経が関与する、組織や器官や臓腑に炎症があり、それが腰痛の原因や誘因となっている事が推測されます。

逆に、脾経の測定値の左右差ラインと、胃経のそれとが、逆方向を示す場合(これを私は、V字ライン又は逆V字ラインと呼んでいます)には、胸椎11番と12番間の椎骨の捻れや脊柱管狭窄が考えられます。