1 外資系でよく見かける社員

英語「は」できる人、英語「も」できると思っている人

ところで外資系というよりも、どちらかというと日本の会社の中間管理職やその上のクラスでときおり見るのが、英語「も」できると思っている人たちです。

日本の会社であっても、近頃は日本人以外の人と日本語以外の言語、例えば英語でコミュニケーションをすることが多くなりました。ビジネスがグローバルになって、海外の会社を買収したり、海外の会社との取引が増加したりしているからです。

コミュニケーションといっても、メールなど文書つまり書かれた文字であれば、今は多くの社員が読んで意味を理解し、英語で返事を送ることでおたがいに理解することができます。すなわち読み書きはほとんど問題がありません。

ところが、英語を読んで意味を理解し、英語で文章を書ける人のなかに、実際には英語の聞き取りがほとんどできないにもかかわらず、自分は英語を聞くことも話すことも読み書きと同じくらいにできる、と思っているような人たちをときおり見ます。

例えば外国人が何人か出席している会議などで、そういった人が英語で話をするのを見ていると、実際には相手の外国人が言ったことをほとんど理解できていないにもかかわらず、表情を見ているとあたかも理解しているような顔つきで話したり返事をしたりすることがあります。

相手の言ったことに関するポイントをついた明確な返事ではなく、どこか少し的外れのあやふやな言い方ですが、日本へ赴任してから間もない外国人は、それで相手の日本人が理解していると思ってしまいます。

しかし、ある程度長い間日本で仕事をしている外国人は、日本人の曖昧な顔つきや返事の内容などから、その日本人が英語をほとんど聞き取れていないことを察し、二度三度言い方を変えて相手が本当に理解しているか確かめようとすることがあります。こうして、相手の日本人が正しく理解していることを確認することで、相互の誤解を避け間違いのない仕事ができます。

このようなことが起こる原因の一つは、会話のなかで相手に何回も聞き返すことはよくないことだ、という潜在意識を日本人は持っているからではないでしょうか。その結果、日本人的な曖昧な顔をして、あたかも理解しているかのような素振りで話をします。

しかしビジネスではこれはきわめて危険なことです。誤解とまではいかなくても、相手の言うことを正しく理解していないことが原因となり、後で差し支えが生じることもあり得ます。

そんなことを避けるには、相手の外国人が言ったことに少しでも理解できないところ、よくわからないところがあったら、遠慮せずに聞き返すべきでしょう。

そして、できることなら「何と言ったのですか」と聞くのではなく、「あなたの言ったことはこういうことですね」と言うことです。つまり相手に何を言ったのか聞くのではなく、相手が言ったことを確認するよう心がけることです。

そうすることで、ビジネス上での誤解や不確かさを防止できると共に、本人も相手の外国人も安心することができます。