真序百人一首事始め

百人一首を全部覚えてしまいたい。なぜこんなことを思い立ったのか。理系の人間なもので元々図形や数字系のパズルが好きでした。そこで、補完的に言葉関係のパズルもやってみたいと。でもクロスワードは気が乗らないし。ということで昔から記憶系の勉強が苦手だったことの反省も込めて、なぜか百人一首を暗記してみようと思い立ちました。

自信はあまりなかったのですが、通勤の電車内とか隙間時間を使いながらの数カ月後にはなんとか百首を覚え切ることができました。「あなわおたこ」と頭文字で整理された順番で覚え切りました。でもかるた大会を目指すわけじゃないのでこんな覚え方をしてもしょうがない。それに、覚え切ったつもりでもしばらく経つと忘れてしまうことがわかりました。

どうせなら鑑賞を兼ねて、元の姿のまま、百首を本来の順番通りに覚え直し、更に歌人を突き合わせて覚えようと暗記作業のやり直しを始めました。

しかし、やってみるとこの順番ではなかなか覚えにくいことがわかりました。それでも、覚え方を自分なりに工夫して、頭の中に、10の単位で場所を作って、この空間にできた場所に格納してゆくというやり方をとって、覚えにくいなりに、なんとか覚え直すことができました。

しかしなんとなくしっくりこない。覚えにくい原因を探ってみると、似た歌がばらばらといろんなところに散らばっているということのように感じました。似た歌を近くにという風に並べ替えた方が覚えやすいのか、それともかえって覚えにくくなるのだろうかというような興味が湧いてきました。

それで、百人一首に関連した資料を調べてゆくうちに、『絢爛たる暗号 百人一首の謎をとく』(参考資料3)の内容に大変興味を持ちました。似た歌を近くにという風に並べ直した方が本来の姿に近いということだそうです。

更に類似の本を調べてゆきましたが、中でも『百人一首の謎解き』(参考資料10)の4首一組という考え方が気に入りました。

なぜ気に入ったかというと、私自身、覚えた歌を反芻しているうちに、2首が一組になっているような歌群、4首で一組と感じられる歌群がすぐにいくつも思い浮かんできたからです。

同じ主題の歌がふたつ並ぶだけでも主題の広がりを感じとることができます。更に同じ主題の2首セットをふたつ並べてみると、4首が2重の構造になって主題が重層化して、歌の世界、イメージの奥行きが深まってゆくことが感じられました。

色々と試しているうちに百首すべてを、25個の4首セットに組み直すことができました。このようにして揃えられた25個の4首セットを大きな主題の流れの中で更に色々に並べ替えてみると、驚いたことに、思いがけなくすっきりした配列になることがわかりました。

そして、日にちを置いて何度か入れ替えをやったところで、もうこれ以上並べ替えられないと感じるところまで煮詰まりました。そこで、改めて全体を眺めてみると、100首全体でとても形の整った長大な抒情詩になっていることに気づいたのです。