第1章 渚にて

歴史上の最高の科学者は私たちと同様に伝統的な考え方に反旗を翻してきた。太陽は地球の周りを回っているのではないと言ったガリレオはどうだろう。あるいはすべての生き物、動植物も、陸も海も6日間で創られ、神は7日目に休息されたという聖書の教えに刃向かったダーウィンはどうだろうか。

ある時マウス白血病ウイルスと慢性疲労症候群との関係についての私たちの理論を否定する論文に私が愚痴を言っていると、フランクは私を彼の研究室に連れて行き、隅にあるファイルキャビネットを指さした。

彼はキャビネットを引き出したが、そこにはT細胞増殖因子(インターロイキン-2)とか成人のT細胞白血病を引き起こすヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)に関する彼の説が間違っていると主張する論文が沢山入っていた。

彼の発表の同じ月にそれを否定する論文が発表されたのもあった! 彼は「暑くてたまらなければ、台所から出たらいいんだ。さあ、仕事に戻ろう」と言った。

読者には本書で提議される科学的な疑問については、時折全国的にセンセーションを呼ぶような重大な犯罪事件を追いかける感じで考えていただきたいと思う。当然反論が生じる。

ある人を殺したと起訴される人がいるとする。犯人だとする証拠があるだろうし、被告側からの反論証拠も見ることになる。そしてどの証拠が信用でき、どれが信用できないかあなたが決めることになる。こういう手続を踏むことになる。

どちらもそれぞれの証拠を提出し、それぞれ相手側の証拠の信頼性にクレームを付けるのを聞いた上で、あなたは結論にたどり着く。私の言い分を以下に書かせていただきたい。

科学は企業のカネの力で腐敗してしまった。この腐敗により私たちの健康は直接、悪影響を受けている。それは肥満の蔓延であり、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経系疾病や多発性硬化症、あるいはガンの爆発的増加、それに学校での襲撃事件に見られる若者の精神病などだ。

これは人類の全滅に繋がらないかもしれないが、一種の間引きだという人もいる。私たちの実際の体験から考えてみると、このとんでもない意見に反論するのはなかなか難しいというのが本音である。

私は大学を終えた1年目に世の中のことを知らないままこの世界に入った。今とは違い、当時私たちの健康に関する科学がこれほど根本的に腐りきっているとは思いもしなかった。

私のことをハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話『裸の王様』にでてくる男の子だと思ってほしい。