野兎

母が山の下草刈りから帰ってきたなんだか(ふところ)がもぞもぞと動いている

「野兎つかまえてやったで」と

ニコニコしながら懐から

小さな子ウサギを子供たちの前に出した

薄茶色のふわふわした毛の子ウサギ

かわいくて三人が順に抱いた

おもちゃなどなく

山や川 草花が遊びだったので子ウサギは子どもたちを喜ばせた

遠い昔の母との思いで

最近ブドウ畑で見た動物ヘビやカエルなどは除外

シカ ヌートリア ハクビシンタヌキ アナグマ ハタネズミ

それに 

野兎 野生のリス

野兎を見たのが一番嬉しかった

近寄りもしてくれないのに名前を付けた

孫の名前から「いゆっぴー」と呼び

隣の友人も「ピーター」と名付けた

お互い「うちの子そっちですか」と聞く

人間の思惑など関係なくて

たまにしか現れてくれない

ほら こっちの畑の方が草がいっぱいだよ

母の懐のにおいを何回も運んできておくれ

ぴよんぴょんと跳ねてきておくれ

 

【第1回から読む】詩集「村においでなさい」より三編