はじめに

一九三四年生まれ、二○二二年に88歳になった私の人生は、少年時代の「海外雄飛の夢」、何事にも逃げずに向き合う「挑戦心」、それに「生涯現役への思い」が原動力になってきたように思います。

私の人生・四ステージの歩み

序章レジュメにもあります通り、第一の人生は61歳で退職した会社生活時代、第二の人生は会社定年後62歳で起業した人材紹介会社自営時代、第三の人生は77歳時思わぬ転倒による重度頸髄損傷以来の10年にわたるリハビリへの挑戦、と歩んでまいりました。

そして今直面している、リハビリを続けながらの第四の人生。決して平穏無事とは言えない、ドラマティックとも言われる面もある波乱の人生ですが、私なりには困難に向き合う挑戦は、前向きの力、可能性を引き出す“元気”のもとであったと言えるかと存じます。

前著『チャレンジド魂』でも引用いたしましたが、“WHERE THERE IS A WILL, THERE IS A WAY”(意志あるところに道あり)です。

二○二二年、私の第四の人生、妻にとっての第二の人生をスタートして

二○二○年暮れに今のマンションに引っ越してきて1年もたたない頃、認知症の進行が止まらない妻と身体が不自由な私の二人の生活をこれ以上続けることはムリ、共倒れになるとサポートいただく関係者の皆様からアドバイスを受けました。

二人が離れ離れになる選択はまことに辛い、苦渋の決断でした。本書で詳細ご紹介しておりますが、今、妻は二○二二年二月より入居した施設・グループホームの皆様の手あついお世話のおかげで、安心安全、アットホームな雰囲気の中で、不安なく表情も穏やかに過ごせております。

私の住まいは妻の居住地からさして遠くないところにありますが、初めてのマンション生活での人様との交流も含め、新しい環境の中で始めることも多く、それを楽しみながら過ごさせていただいております。

『60数年ぶりのラブレター』を心の支えに

妻には時々に手紙を書き、面会時に届けております。恥ずかしながら、『60数年ぶりのラブレター』と銘うった手紙を施設のスタッフの方から妻に読んで聞かせていただくと、妻はしっかりと眼を開け、うなずきながら聴いている由。

また、これまでお世話になってきた関係者の方々にも近況報告がてら読んでいただくと、“妻に安心感を与え、元気と生きる力になる”との感想も。私自身の一人生活にもくつろぎとうるおい、癒しになっています。

この『ラブレター』は、私たち二人の人生の来し方、老いにめげずに今を生きる姿、未来への歩みを象徴するものとして、本にして参考にしていただいてはとの関係者の方々からのおすすめをいただきました。

妻の「認知症」は私にとってなかなか受容しがたく、この本の表題に認知症なる言葉を使うことにもためらいがありましたが、現実を受け止め、妻とともに希望をもって進むべく、本作を皆様にお届けする次第でございます。

佐武博司