王国への帰り道

「また魔法上達したんだな。やっぱりスゲェよ、ユウは。」

「そう? ありがと! シンに褒められると嬉しいや!」

ぐぅぅぅぅ。

「・・・・・・・・・・」

「シン、お腹空いたの?」

「あぁ、体を動かしたからな。」

「じゃあ! 僕のとっておきの酒場に連れていってあげる!」

「それは嬉しい。最高だ。」

「これからのことは、また明日から考えればいいよ。今はとにかく美味しいご飯だっ!」

「おうっ!」

夕闇に染まる景色の中を、2人は楽しそうに歩いていった。

    

王国(中心都市)

「シン! 今度はあっちのお店に行こうよ!」

「そんなに急がなくても、お店は逃げたりしねぇぞ。」

グラストとの戦いから数ヶ月が経った頃。

シンとユウの2人は、束の間の休息を満喫していた。

「うわぁ! これも美味しそう! ・・・・・・・あっ、あそこのも! 凄い! これじゃあ全部食べ切れないよ!」

「見た目の割に大食いだよな。ユウって。」

「美味しいものが目の前にあったら、食べるしかないよ!」

年に一度。

王国では、世界を創造した女神に感謝を込めて、祝いのお祭りが行われる。

本来なら今日も、2人は王様からの命令により、魔物の討伐をしなければならないのだが、「息抜きに遊ぼうよ。」・・・・・・・と、ユウがそんなことを言い出したため、楽しむことになった。

ユウと一緒に過ごせるのなら、魔物なんて二の次。

勇者としてよりも、1人の人間として、愛する友人の隣にいることを、シンは大事にした。

「シン! ほら! あ〜〜〜〜ん!」

「あ〜〜〜〜んって、お前な。」

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!」

「あ、あ〜〜〜ん。」

「どう? 美味しい?」

「ああ。」

「よかった!」

仲よくご飯を食べ終えると、ユウはある話を切り出した。

「魔王のことについて、ちょっと調べてみた。」

「・・・・・・・・・・・」

空気が変わり、2人の表情は真剣なものになる。

「かなり時間がかかったよ。魔王の存在自体を知らない人が多いからね。」

「そうだろうな。」

「わかったことは2つ。人間であること。すべての魔物を生み出した魔法使いであること。」